小学校3年生から導入される英語教育。
2011年度に、全国の公立小学校5年生・6年生の外国語活動が必修となり、2020年度より小学校3年生から英語教育が導入される予定になっています。東京オリンピックも近づき、希望する学校では2018年度から専攻実施が認められています。
5年生・6年生では、親世代が中学の基礎英文法として学んだ「三人称」や「過去形」も学習することになるそうです。新しく英語教育が始まる3年生・4年生は、「読み聞かせ」や「絵本」を活用した、音による指導を重視することになります。
» 参考:英語教育「過去形」小6で 小3~4は読み聞かせ:日本経済新聞
日本から海外への留学する学生の減少、若者の内向き志向が問題視されていますが、今の小学生が大人になる頃には、日本人の英語力も大きく向上していることを期待したいですね。
そんな期待を持たせる英語教育ではありますが、その変化に戸惑うご両親も多いことでしょう。ご両親の年齢にもよりますが、ご両親が小学生だった頃は、携帯電話もパソコンも普及しておらず、今ほど外国人を町で見かけることもありませんでした。中学に入って突然必修となる重要科目の英語に、とても興味を持ったか、拒絶反応を起こしたかのどちらかに分かれてしまう傾向があったのではないでしょうか。現在の日本人の英語力の現状から考えれば、拒絶反応の方が断然多かったということなのかもしれません。
現代の子供たちは、英語に触れる機会も、ご両親の時代とは比べ物になりません。英語アレルギーのあったご両親だからこそ、小さな頃から英語に親しんでもらいたいと、子供を英語塾や英会話教室に通わせている方が多いことも納得できることです。
親子で楽しむ絵本(洋書)の読み方とは
もちろん、英語塾や英会話教室で英語に親しみ、単語や英会話を小さいうちから学ぶことは大切なことです。でも、塾や英会話教室に任せてばかりでなく、お子さんが大好きなママやパパと一緒に英語を楽しめたら、お子さんにとっても英語を身近に感じる一番のきっかけになると思いませんか?
子どもの英語教育が重要視されるようになり、ご両親もご自分の英語力と向き合う機会が多くなったはずです。お子さんにとって、英語学習より大切なのは、大好きなママやパパとの楽しい時間です。そんな時間に、英語の絵本を役立ててみてはいかがでしょうか。
せっかく親子の楽しい時間なのですから、単語を暗記させたり、テストのようなことをして、「できる・できない」を図る学習的な発想は忘れ、是非コミュニケーションに役立つような、親子関係にとって密度の濃い時間にしてほしいと思います。
お子さんと絵本を楽しむ時のママ・パパの心得
お子さんと一緒に絵本を楽しむ時のポイントを挙げてみます。わかっているようで、親の気持ちが先に立ってしまい、実践するのはなかなか難しいこともあるかもしれません。確実な英語力を持った人に成長してもらいたいという願いがあるなら尚更、英語を好きになってもらうことに重点を置きましょう。
自分も英語を楽しむ
英語学習の先輩としてお子さんをリードしてあげることは大切なことです。まずは自分が楽しむことです。たとえ易しい英語で書かれた本でも、短い本でも、英語の本を1冊読み切り、内容理解だけでなく、読んだ英語から何かを感じ取れたなら、それは大人にとっても嬉しいことですし、達成感も得られます。まずは、少しだけ調べれば自分が声にだして読める、わかるレベルで、自分の好みに合った絵本を選びましょう。
子どもの英語力を試すようなことはしない
子ども向けの絵本だと、お子さんが知っているはずの単語や言い回しなども出てきます。それをいちいち「勉強したはずなのに忘れちゃったの?」「この間教えたでしょ!」などと言っていては楽しい時間が台無しです。言いたくなる気持ちもわかりますが、勉強は勉強の時間にすることにして、絵本を読む時間は楽しむことに徹し、お子さんの英語を楽しむ気持ちを育てましょう。
予習をする
実際に絵本を手に取るとわかると思いますが、絵本だからといって、普段英語に触れていない人には簡単に読めるものではありません。予習といっても、完璧に文法構造を理解するような予習である必要はありません。読み聞かせのための音読の練習や、音読する際に、発音が不確かなものは確認する、或いは、意味がつかみにくい文章は単語の意味や、単語の使い方などを思い出しておく程度の予習で充分です。スムーズにお子さんに読み聞かせや解説をしてあげられるようになれば、自分の勉強にもなりますし、お子さんからの信頼度もあがります。
文法通りに訳す必要はない
学校で習ったような文法通りの訳文で解説しても、堅苦しくて面白味がありません。試験ではないので、絵本の世界をつかんでいれば、英文通りの訳でなくても、お子さんが喜ぶような言葉で、雰囲気たっぷりに英語と日本語を聞かせてあげましょう。同じ言葉が繰り返されている時は、お子さんに読んでもらったり、日本語訳を省いたり、お子さんの年齢や英語力に合わせて工夫して読み方も変えていきましょう。
会話が広がるような絵本を選ぶ
絵本の場合、その絵本ごとのテーマがあると思います。単語や文法を理解してストーリーさえわかればいいというものではありません。絵本全体を通して、作者が伝えたかったことを自分なりに読み取り、自分が感じたこと、お子さんが感じたことを、読んだ後に話し合う時間を持てるような作品を選べば、親子の楽しい会話の時間につながります。
子供が飽きたら切り上げる
1度に全部読み終える必要はありません。お子さんが飽きたら無理強いせずに切り上げ、数日かけて1冊を読んだり、お子さんが気に入ったシーンがあれば、同じシーンを何度でも繰り返し読んであげましょう。
親子のコミュニケ―ションが広がるおすすめ絵本(洋書)
今日紹介する絵本は、小学校で英語学習を始めた頃のお子さんと一緒に読むのにお勧めの絵本です。世代を問わず楽しめる絵本なので、お子さんが一人で読んだり、英語力がついた中学生、高校生、或いは親世代が読んでも、それぞれの世代なりに色々感じることができる素敵な絵本です。
シリーズで2冊紹介しますが、著者は日系アメリカ人。小学生のお子さん二人に向けたメッセージが表紙を開いたページに綴られています。お子さんを想いながら書いた本なので、親が子供の成長を願う気持ちに溢れています。海外の絵本というと挿絵も独特なものが多いですが、この絵本の絵はとても可愛く癒されます。
WHAT DO YOU DO WITH AN IDEA?
小さなアイデアを思い付いた少年が、そのアイデアのたまごを大切に育てていくストーリーです。ある日突然見つけたそのたまご(アイデア)を、少年はどうしたらいいのかわかりません。離れようとしても、どうしても気になって離れられません。そのたまごを受け入れ、大切に育ててみると少しずつ自分の世界が変わっていきます。
アイデアは可愛らしいたまごで表現され、具体的なアイデアの内容そのものは示されません。小さなたまごが成長していくにつれ、絵本の中の世界も少しずつ美しいものに変化していきます。
そのアイデアは、特別に世界を大きく変えるような立派なアイデアである必要はなく、身の回りの小さな思い付きなどを指しているのだと思います。小さなお子さんなら、遊びの延長のたわいもないアイデア、大人からみたらバカバカしいと感じるようなアイデアを出してくれるかもしれません。夢や希望にあふれる思春期の頃なら、夢に向かった壮大なアイデアを思いつくかもしれません。少し疲れた大人たちは、年齢や仕事、環境を理由に敢えて口にしていないアイデアもあることでしょう。そういったアイデアを年齢問わず「大切に育ててみようかな」と誰もが感じることのできる絵本です。
もしかして、「英語をもう一度勉強し直してみよう」というアイデアをやる前から諦めてしまっている、なんていうことはありませんか?
そんな大人にも勇気を与えてくれる絵本です。
この絵本はアメリカで大ヒットし、数々の賞も受賞しています。
ある学校では、生徒たちと先生がこの本からこんな曲を作っています。子供たちの色々なアイデアを引き出すきっかけにもなりますね。
世界各国で翻訳されていますが、日本語の翻訳版も出版されています。
アイデアたまごのそだてかた
英語でも、とても読みやすい絵本なので是非原語で楽しんでいただきたいと思いますが、日本語版も素敵です。
もう1冊はこちらの作品:WHAT DO YOU DO WITH A PROBLEM?
何か困ったことが起きた時、どうしますか?少年は、ある日突然、理由もわからず目の前に現れたプロブレムがどんどん大きくなることに不安を感じ、逃れることばかり考えています。でも勇気を持って、問題に立ち向かい自分で解決していくことで、少年は大切なことに気が付きます。
アイデアと同様、具体的なプロブレムの内容は示されません。何か問題が起きてしまった時、どうしたら良いのかわからず、悩めば悩むほど、問題は大きくなっていくように感じてしまうものです。でも、向き合う勇気を持つ大切さに気付き、見方を変えてみれば、問題は、考えていたものとは違うものに変わっていくはずです。
子どもの頃、大人になった今では思い出せないような小さなことで、本気で悩んだ経験は誰にでもあると思います。読んでいて、そんな子どものころの気持ちを思い出しました。正直に謝ればわかってもらえることなのに、それもできず、できない自分が益々自分の中の問題を大きくしてしまうこともありました。大人から見たら、「つまらないこと」と思うことでもお子さんにとって一大事なら、この絵本をきっかけに、お子さんが自分の力で解決できる方法を一緒に考えてあげて下さい。
大人になってからも、自分はダメな人間だと思い込んでしまったり、立派な親になれないと悩んでしまったり、悪循環に陥ってしまうこともあるでしょう。この絵本は、困ったことや問題は、自分を苦しめるために存在しているわけではなく、自分の成長の糧となるものだと、前向きに考えさせてくれる絵本です。
まとめ
引用元:GAHAG
いかがでしたか?お子さんと一緒に読んだ時の、具体的なイメージをつかんでいただけたでしょうか。紹介した絵本は、抽象的に表現されているので、ただ、ストーリーとして読んで面白いという種類の本ではないかもしれません。その分、読む人のイマジネーションを広げ、自分に当てはめることができます。「このたまごには、どんなアイデアが入っているんだろうね?」とお子さんの意見を聞きながら読み進められる絵本です。
著者が伝えたいことは、決して難しいことではなく、読解力や想像力がなければ理解できないようなものでもありません。とてもシンプルなメッセージです。
最後に少し英語表現についてお話しするとWHAT DO YOU DO WITH AN IDEA?というタイトルですが、「そのアイデアで何をしますか?」というより、「アイデアをどう扱いますか?」「アイデアをどうしますか?」というニュアンスになります。
お子さんと一緒に読んで、それぞれのIdeaやProblemについて話してみてはいかがでしょうか。何より大切なことは英語を楽しむことということを、いつも心に置くことをお忘れなく!
英語の絵本については、こちらの記事の中でも紹介しています。
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