イギリス王室の恋愛とスピーチから英語を学ぼう【恋多きプリンスの話】

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世界が注目するイギリス王室・

イギリスと言えば「紳士の国」。礼儀正しく上品で教養があり、イギリス人としてのプライドを持った英国紳士を想像する人も多いのではないでしょうか。

そして、忘れてはならないのがイギリス王室。世界の王室の中でも、これほど華やかで注目を浴びている王室は他にはないのではないでしょうか。ジョージ王子とシャーロット王女の可愛らしさ!テレビでその姿を見るだけで幸せな気分になれますね。

イギリス王室は「開かれた王室」とも言われます。「開かれた」部分は色々な面から見えると思いますが、「恋多き王族方」といったイメージもありますよね。恋愛については、格式と自由、そして開放が同時に存在するため、世界から注目される王室なだけに、何かあると報道もどんどん過熱してスキャンダラスな扱いになっていってしまいます。

あのダイアナ妃の衝撃的な死から20年以上が経過しているなんて信じられません。

今日はイギリス王室のスピーチを取り上げます。

ダイアナ妃の悲劇

イギリス王室の恋愛問題と言うと、やはり一番に思い出されるのは、チャールズ皇太子とカミラさんとの関係ですね。

ダイアナ妃については、とてもここでは語り切れませんが、20歳という若さで年齢の離れたチャールズ皇太子と結婚し、その後のさまざまな想いは、私のような一般人には想像もつかないものなのだと思います。

想像と違う王室の暮らしと孤独、愛人の存在、マスコミによる報道。苦しんだ結果、ダイアナ妃自身も自暴自棄になっていきましたが、そんな中でもダイアナ妃が慈善活動を辞めてしまうことは決してありませんでした。

1997年8月31日、パパラッチの車を巻こうとしたダイアナ妃が乗った車がパリで事故を起こし、ダイアナ妃は36歳という若さで命を落としました。

確か週末だったんですね。たまたま主人と真鶴をドライブしていて、休憩に入ったドライブインのテレビニュースで知って、ショックを受けたことをよく覚えています。

なぜ命まで落とさなければならなかったのか、本当に残念で悲しい事故でした。
「事故」と一言では片付けられない出来事でしたよね。

ダイアナ妃の葬儀でのダイアナ妃の弟、スペンサー伯爵のスピーチの一部です。
スピーチでは、英語ならではのリズムや音の特徴をよく学べると思います。下線をひきましたが、ダイアナ妃の特徴を述べる際には、文の切れ目の -ty という音が印象的です。

Diana was the very essence of compassion, of duty, of style, of beauty. All over the world she was a symbol of selfless humanity. A standard bearer for the rights of the truly downtrodden. A very British girl who transcended nationality. Someone with a natural nobility who was classless and who proved in the last year that she needed no royal title to continue to generate her particular brand of magic.

この部分では、前置詞のofや、whoという関係代名詞を使うことでも一つのリズムを生み出しています。

日本語に直そうと思うと少し難しく感じるかもしれんが、a symbol of selfless humanityやher particular brand of magicなどは、ピッタリの日本語に変えなくても、ダイアナ妃の人柄や英語そのものから感じ取れる表現ではないかと思います。

「ダイアナは思いやり、義務感、スタイルと美しさに満ちた人でした。世界中において、無償の心を持った人の象徴でした。虐げられた人々の権利のために先頭に立ち、民族をも超えた一人のイギリス人の女性でした。誰にでも平等で、生まれながらの気高さを持ち、ダイアナだからこそ生み出せる魔法をかけ続けることに、王家の称号が必要でないことを、昨年証明してみせた人でした。」

「昨年」というのは、亡くなる前年にチャールズ皇太子との離婚が成立したことをいっているんですね。

ダイアナ妃は摂食障害に苦しんでいました。そのことについても触れています。

For all the status, the glamour, the applause, Diana remained throughout a very insecure person at heart, almost childlike in her desire to do good for others so she could release herself from deep feelings of unworthiness of which her eating disorders were merely a symptom.

for all ~で「~にもかかわらず」という意味があります。
worthinessは「価値」「値打ち」ですが、接頭辞のunがつくことで否定の意味になります。

「あれほど、地位と魅力を兼ね備え、人々から称賛を浴びてていても、ダイアナは心に不安をかかえ続けていました。子供のように無心に、他人のために尽くしたいと願うことで、自分の存在価値を見失ってしまう不安から自分を解放することができたのです。摂食障害はその自分の存在意義に対する不安の一つの表れでした。」
※わかりやすくするために、摂食障害の部分をあえて切り離して訳しました。

エリザベス女王のスピーチ

ダイアナ妃の死後、マスコミの王室へのバッシングもあり、王室の対応に対する国民の怒りも大きくなっていきました。

そしてダイアナ妃が亡くなってから約1週間後の9月5日、エリザベス女王がダイアナ妃の死について、国民に向けスピーチを行いました。

その一部分も紹介します。

First, I want to pay tribute to Diana myself. She was an exceptional and gifted human being. In good times and bad, she never lost her capacity to smile and laugh, nor to inspire others with her warmth and kindness.

後半は、直接的に訳すと、「(どんな時も)笑っているcapacity、そして温かさと優しさで人々をinspireするcapacityを決して失わなかった」となります。

capacityは日本語でもキャパとか言いますが、色々な場面で使われる言葉ですね。「許容範囲」や「許容能力」を表しています。それはわかっていても、「ダイアナ妃の許容能力」では、日本語としても言いたいことを伝えている感じはしませんよね。むしろ、英語のままher capacityを感じ取った方が伝わりやすいのかもしれません。何でも日本語に直しながら読むのではなく、英語のまま感じとることも時には大切です。

inspireについても、辞書を調べると、人を「元気づける」とか「奮い立たせる」、あるいは「(感情を)抱かせる」という意味ですが、日本語に訳しにくい単語の一つだと思います。だから日本語としても「インスパイアする」などと使われているのかもしれませんね。
英語で感じ取っていただくことが一番ですが、日本語でイメージをつかんでもらおうと思うと、以下のような感じでしょうか。

「最初にダイアナに心から敬意を表したいと思います。彼女は特別な存在で、素晴らしい資質に恵まれた人でした。良い時も悪い時も、笑顔でいる寛大さを失わず、温かさと優しさで人々を励ましてきました。」

ダイアナ妃の事故から10年後、王室と首相の苦悩を描いた映画がリリースされました。女王が国民に向けてのスピーチを行うに至った事情が描かれています。

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チャールズ皇太子は結局カミラさんと結婚しましたね。
そこまで貫ける愛ならば、不倫だろうが何だろうが、最初から頑固にその愛を押し通してほしかったと思います。

愛を貫くと言えば、実はエリザベス女王に案外近い所で、その愛を貫いた人がいたことをご存知でしょうか?

英国王のスピーチ

『英国王のスピーチ』は日本でもヒットした映画なので、ご覧になった方も多いことでしょう。

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この映画の主人公は、今のイギリス女王、エリザベス2世の父親であるジョージ6世です。突然、国王の座につくことになってしまったジョージ6世ですが、ジョージ6世には吃音という悩みがありました。妻や専門家の力を借りて、それを克服し、国民の前で大切なスピーチに臨むというストーリーです。

ジョージ6世(アルバート)は、イギリス国王ジョージ5世(アルバートが誕生した時はまだ国王ではありませんでした)と王妃の間に次男として生まれました。
次男なので、長男がいたわけです。アルバートは、国王を継ぐ兄エドワードがいたため、国王になるという意識はなく育ったようです。
では、なぜ国王となることになったのでしょうか。

恋多きプリンス、エドワード

長男のエドワードは恋多き男性でした。アルバートが20代後半で結婚し、二人の娘(今のエリザベス女王とその妹)をもうけたのに対し、エドワードは独身のまま数々の浮名を流し続けていました。

そして、アメリカ人女性ウォリスと恋に落ちたエドワードは、ウォリスとの結婚を望むようになりました。当時ウォリスは再婚して人妻でした。つまりエドワードと結婚するためには、2度目の離婚をすることになります。アメリカ人というだけでなく、離婚歴もあるということで、この結婚は大反対されたことは想像できるのではないでしょうか。

1936年父親であるジョージ5世が亡くなり、長男のエドワードがエドワード8世として王位につきました。ウォリスとの仲は誰もが知るところでしたが、ウォリスが王妃になることは議会が認めませんでした。どうにか認めさせようというエドワード8世に対し、当時の首相が「王位か結婚か」を迫り、結果的にエドワード8世はウォリスとの結婚を選択し、王位を捨てることになったのです。

そして弟のジョージ6世が王位を継承することになりました。

王位より愛をとったのですから、なんともドラマチックですよね。ジョージ6世も含め、周りは大変だったと思いますが…。

当然、ドラマや映画の題材となっています。
マドンナが監督を務めた『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』も話題になりました。

ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋

エドワード8世の退位スピーチ

このような事情で、1936年1月20日、父親であるジョージ5世の死を受けてイギリス国王となったエドワード8世は、同年の12月11日、その地位を降りることになりました。

エドワード8世は、ラジオ放送を通じで、国民に自らの言葉で退位について語りました。
私は『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』は観ていないのですが、退位のスピーチのシーンも描かれているはずです。

エドワード8世自身は、とても魅力的な人で国民にも人気があったようなので、その衝撃は大変なものだったと思います。国民はまさか退位の発表だとは思わず聞いていたと何かで読んだことがあります。

そのスピーチの一部です。
まずはジョージ6世に無事王位が引き継がれたことを伝えました。
A few hours ago I discharged my last duty as King and Emperor, and now that I have been succeeded by my brother, the Duke of York, my first words must be to declare my allegiance to him. This I do with all my heart.

succeedは自動詞では「成功する」という意味ですが、他動詞になると「~の後を継ぐ」という意味になります。
完了形の受動態なので、「すでに王位が引き継がれた」ことを言っています。
the Duke of Yorkは弟のジョージ6世のことです。
「最初に国王への忠誠を誓うことを宣言します」と続きます。

そして退位の理由については以下のように語っています。

But you must believe me when I tell you that I have found it impossible to carry the heavy burden of responsibility and to discharge my duties as King as I would wish to do without the help and support of the woman I love.

And I want you to know that the decision I have made has been mine and mine alone. This was a thing I had to judge entirely for myself. The other person most nearly concerned has tried up to the last to persuade me to take a different course.

スキャンダルで国中を騒がせてきたエドワード8世は、かなりストレートに自分が貫いた愛について語っていますね。今さら隠すようなことではなかったのです。
1節目のI have found it impossible to ~で、「~することは不可能だとわかった」ということです。

「愛する女性の支えなしに、国王としての重い責務を自分が納得できるように果たすことはできないことがわかった」ことを国民に訴えているんですね。

2節目では「全て自分が決めたことだ」と、これまで非難が集中してきたウォリスをかばっています。

「The other person most nearly concernedは、最後の最後まで、different course(つまり退位以外の道)をとるように説得を続けた」と言っています。

The other person most nearly concernedはウォリスのことです。
誰もがわかっていることであっても、さすがにこの場でハッキリ言うことは、はばかられたとのだと思います。「最も近くで(この件に)関わったもう一人の人」と遠まわしに言っています。

そして後を継いだ弟に関して、「長年立派に公務をこなしてきた弟が、確実に国王の座を継いでくれることを確信していたので、自分が退位の決断をすることは難しいことではなかった」と言った後の言葉です。

And he has one matchless blessing, enjoyed by so many of you, and not bestowed on me — a happy home with his wife and children.

matchless blessing(何ものにも代え難い天の恵み)とは、最後のa happy home with his wife and children のことです。
bestow on~は「~に授ける」という意味なので、否定形で「私には授からなかったもの」ということですね。

「(弟は国王を継ぐにふさわしい人である上に)世の中の多くの人が手に入れているもので、自分には授かることがなかったもの、つまり妻と子供がいる幸せな家庭が弟にはある。」

この部分は、エドワード8世の立場にたって聞くととても切ないですね。
でも、ジョージ6世も、妻となったエリザベス(女王と名前が同じで紛らわしいですが)を自分で選び、一生懸命口説いて結婚しました。結果的にエリザベスがいたから国王の責務を全うできたのかもしれませんが、別に国王になるために結婚し子供を持ったわけではなかったはずです。ジョージ6世はこのスピーチをどんな思いで聞いたのかな?と考えずにはいられませんでした。

ヘンリー王子の結婚式が今年の5月19日に行われることがイギリス王室から発表になりました。お相手は、アメリカ人の女優、メーガン・マークル(Meghan Markle)です。メーガンはアメリカ人で、離婚歴もあります。ウォリスみたいですね。メーガンの母親はアフリカ系アメリカ人であることも取り沙汰されています。

この結婚が実現するのですから、時代も大きく変わったということです。

まとめ

皆さんはどのように感じたでしょうか?
ダイアナ妃の死によって、イギリス王室が変わったことは間違いないことなのでしょう。

これは、国民に向けたスピーチではありませんが、チャールズ皇太子とカミラさんとの結婚式でエリザベス女王は、「2つお伝えしたい大切なことがあります」と言った後、このように語ったとBBCの記事にありました。

The first is that the Grand National was won by Hedgehunter. The second is to say to you that despite Becher’s Brook and The Chair and all kinds of other terrible obstacles my son has come through and I’m very proud and wish them well.

the Grand Nationalとは、4月に行われるイギリスの大きな競馬の障害レース、Hedgehunterは競走馬の名前です。

Becher’s Brook and The Chairはその障害レースで馬が飛び越える障害柵の名前です。
2005年4月9日、チャールズ皇太子とカミラさんの結婚式のこの日が、この障害レースの日だったのです。

「一つ目は、グランドナショナルレースでヘッジハンターが優勝しました。そして二つ目は、Becher’s BrookやThe Chairのようなさまざまな厳しい障害があったにも関わらず、私の息子はそこを切り抜けてきました。とても誇りに思います。二人が幸せになることを祈ります。」

なんともイギリスらしいです。

最後にダイアナ妃の言葉を紹介します。
I’d like to be a queen in people’s hearts. But I don’t see myself being queen of this country.

ダイアナ妃の望みは叶ったと言っていいのでしょうか…

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