アメリカ南部の町を訪れたことがあるでしょうか? 南部の町、チャールストンで結婚式に参加してきました。
日本とはひと味違うアメリカの結婚式について、実体験をもとにお話します。語学学習は海外文化に触れ、自分の世界を広げるためのものだと私は思っています。
一緒にアメリカの結婚式の雰囲気を楽しんでみませんか?
アメリカの結婚式の流れ
アメリカの結婚式に招待されて半年後、とうとう結婚式が行われるサウスカロライナ州のチャールストンに到着しました。
アメリカの結婚式の習慣や招待されてからの準備、またアメリカ南部の歴史ある町チャールストンについてはこちらで紹介しています。
私はこの結婚式の前に行きたいところがあって、結婚式のあるチャールストンに着いたのは結婚式の前日の午前中でした。もう一日早めればよかったのですが、前日にリハーサルディナーがあることを考えずに旅程を組んでしまったので、ギリギリの到着になりました。アメリカの結婚式は、日本のように結婚式と披露宴だけ出席して終わりということではないんですね。
リハーサルディナー
結婚式前日の夜、Rehearsal Dinnerという食事会があります。この前に結婚式そのもののリハーサルがあり式の流れを確認し、親戚、牧師、ブライズメイドやグルームズマンを務めてくれる友人などを招待し、皆で食事を楽しみ、結婚式当日は忙しい新郎新婦とゆっくり時間を過ごします。
リハーサルディナーと言っても、結婚式当日の食事のリハーサルではありません。私が参加したリハーサルディナーは、チャールストンにあるイタリアンレストランで、前菜からデザートまで、大皿で提供され、各自自由に取り分けるスタイルでした。席を立って友人と話したり、新郎新婦と写真を撮ったり、自由に楽しみます。服装も失礼のない服装程度で問題ありませんでした。
因みに、このディナーは新郎サイドが負担します。
私はこのリハーサルディナーの数時間前にチャールストン空港に到着したのですが、空港までは新婦の父親が迎えに来てくれ、「忙しいのは女性陣だけで、自分はお酒を飲んで待っているだけだから時間はたっぷりある」と言っていました。アメリカはある程度までなら飲酒運転OKなんです。もちろん泥酔しての運転は常識的にNGですし、基準となるアルコールレベルもありますが、ちゃんと運転している限り取締りなどはないとのことでした。ちょっと驚きですね。
滞在場所
今回の結婚式はチャールストンの有名なプランテーションで行われます(プランテーションについてはこの記事の後半で紹介しています)。当然親戚一同がアメリカ各地からチャールストンまでやってくるわけです。
そこで新婦の父が、親戚家族全員が泊まれる海辺の家を借りました。私もそこに泊めてもらったのですが、これが、バスルーム付きのベッドルームが7部屋、全員が集まって過ごせる広~いリビングダイニング、海を眺めるサンデッキ、温水プールとヨット用の桟橋まであり、桟橋のすぐ目の前をイルカが泳ぎ、桟橋の柱の上にはペリカンがやってくるような、日本ではとても考えられない素敵な家でした。4階建てなので乗るのが少し不安なエレベーターもついていました。年配の人もいるので、これがないとやはり辛いです。さすがアメリカとしか言えません。
費用も相当かかっていると思います。新婦の父は、「女性はドレスもあるし結婚式は何かとお金がかかって大変。新郎側はリハーサルディナーだけだから楽だね。僕たちは明日からまた貯金に励むよ」なんて笑いながら言っていましたが、お金がかかるのは日本もアメリカも同じようです。新郎がリハーサルディナー、その他結婚式の費用は新婦サイドが負担するのが通常のようです。
このレンタルハウスも1週間近く借りているので相当の金額だと思います。招待側が全て支払うのか、多少親戚も負担するのか聞きませんでしたが、朝食の準備や夕食の準備などは招待された側が大活躍で、それぞれの方法で役割を果たしています。数日間にわたって祝うアメリカ式の結婚式なので、こうして親戚一同が集まり共に過ごすことは家族の絆が深まる貴重な時間だとつくづく思いました。
結婚式当日
当日準備が大変なのは新婦、その妹、母親で、その他は自由に夕方の式の時間までを過ごします。
会場は、後程紹介するマグノリア・プランテーション&ガーデンの一角です。
服装は、男性はジャケットにネクタイ、女性はちょっとおしゃれなワンピースといった雰囲気でした。
結婚式
式場には早めに到着し、結婚式までは飲み物と軽食が用意されていて、自由にゲスト同士でおしゃべりしながら待ちます。
結婚式は自然の中で行われました。テーマカラーのディープグリーンのドレスのブライズメイドと黒のスーツでピシッときめたグルーズマンに続いて両親と新郎新婦が入場し、式が行われます。この日のブライズメイドは5名、色は同じですが、それぞれデザインの違うドレスを着ています。『風と共に去りぬ』ファンならわかると思いますが、スカーレット・オハラの勝負服の、あのディープグリーンを思い出させます。
南部の風とマグノリアガーデンの自然、スパニッシュ・モスともマッチして、とても素敵でした。結婚式そのものの時間は30分なかった程度だったと思います。
牧師さんの言葉、「私○○は、△△を幸せにすると誓います」のような誓い、近いのキス、親戚の15歳の男の子が父親(新婦の父の兄)とギターを弾きながらボブ・デュランの歌をデュエットしたり、簡単な余興のようなものもありました。
レセプション
式の後、少し時間をおいてディナーパーティが始まります。
会場は、芝生の上に透明なテントで作られた会場で、ここでも自然と一体となる雰囲気を味わえました。中央にはダンスフロアが設けられています。日本から行ったこともあり、席は親族と一緒の特等席。両親、兄弟姉妹、祖父母など近い親族は新郎新婦のすぐ近くのテーブルに座ります。その他の親戚は他のゲストと一緒に少し離れたテーブルでした。日本では近い親族ほど末席ですよね。
席に着くと、ここでもまずはブライズメイドとグルーズマンがペアで最初に入場してきます。先ほどの結婚式とはガラっと変わり、ノリノリの音楽に合わせダンスモードでの入場です。
新郎新婦の両親も若者に負けないダンスを披露してくれました。
そして新郎新婦の入場とともに、ゆったりとした曲に変わり二人のFirst Danceが始まりました。新郎新婦によるファーストダンスは、アメリカの結婚式では欠かせないものです。本来はレセプションの終盤でダンスすることが多かったようですが、最近は最初に踊ることも多いようです。最初ならゲスト全員に注目してもらえます。
ここからは日本の披露宴のように、食事しながら新郎新婦の親、兄弟姉妹などの挨拶があります。皆、上手にスピーチしていました。ところどころにジョークを交え、度々笑わせながら、最後は静かな感動を呼び新郎新婦とハグ。
結婚式でのディナーのボリュームが一番心配だったのですが、食事はサラダとメインのみ、デザートは自由に取りに行く形式でした。メインのヒレステーキは確かに大きめだったのですが、とても美味しいお肉で、普通に全部いただけました。
アルコール類は自分で好きなときに好きなものをもらいに行けるので飲み放題です。
一通り挨拶や食事が落ち着くと、新婦が席を外し、ゲストはフロアでダンスを楽しみます。しばらくするとドレスを着替えた新婦がギターを抱えて登場し、ジェームス・テイラーの『How Sweet It Is (To Be Loved By You)』を、弾き語りでしっとりバラード調に歌いあげました。
I needed the shelter of someone’s arms and there you were.
I needed someone to understand my ups and downs and there you were.
With sweet love and devotion, deeply touching my emotion,
I want to stop and thank you baby. I want to stop and thank you baby.
How sweet it is to be loved by you. How sweet it is to be loved by you.
ゴールドのドレスにギターを抱え歌うかっこいい新婦の横で、新郎は時折ドラム(ドラムと言っても小太鼓1個)で合いの手を入れているだけのところが、何とも微笑ましかったです。二人のこれまでの歩みや新郎の優しさを知っている人なら、誰もが選曲に納得する新婦の気持ちをよく反映させている歌詞です。
この後、感極まった状態で新婦と新婦の父親のダンスへと続きました。
ここで、80代後半の新婦の祖父母が疲れてしまったこともあり、私たちは帰宅することになりました。前日のリハーサルディナーもそうでしたが、一通り終わったら、それぞれ自分のタイミングで帰っていきます。
この後、ブーケトスやガータートスがあったかどうかはわかりませんが、カラオケが用意されていたそうで、若者たちはカラオケを楽しみ、遅くまで盛り上がったとのことでした。
プランテーション
結婚式は、以前は大きなプランテーション(Plantation)だった場所で行われました。ご存知かもしれませんが、プランテーションについて少し紹介したいと思います。
Collinsの学習者用辞書からの引用です。
A plantation is a large piece of land, especially in a tropical country, where crops such as rubber, coffee, tea, or sugar are grown.
コトバンクからも引用してみました。
近世植民制度から始まった前近代的農業大企業およびその大農園
プランテーションでは、奴隷を使って単一の作物を大量に栽培していたのが特徴です。アメリカ南部のプランテーションでは綿花が栽培されイギリスへ輸出されていました。いわゆる三角貿易です。三角貿易は、英語ではそのままTriangular tradeと言います。
現在プランテーションは観光客に開放され、観光地となっていますが、歩いて簡単に見て回れる広さではありません。結婚式が行われたMagnolia Plantation and Gardens(マグノリア・プランテーション・アンド・ガーデンズ)は公園というより、大自然の一部という表現がピッタリくる場所でした。黒人奴隷が暮らしていたというプランテーション内の小屋も残っていました。私は見ませんでしたがワニなどもいるそうですよ。
南部を舞台にした小説を楽しもう
プランテーションの風景と言えば、やはり映画の『風と共に去りぬ』が思い出されます。
この作品は、とにかくビビアン・リーが美しいことと、スカーレット・オハラという強い女性の魅力につきると思うのですが、バックグラウンドとして黒人奴隷も描かれています。
この映画を観る限り、黒人奴隷は家族同様強い絆で結ばれ、お互いを尊重しているように見えるのですが、この点は様々な批判がある部分でもあります。原作も南北戦争当時の様子が詳細に描かれています。映画は原作と違う部分もあり、映画でははっきりと描かれていませんが、原作を読むと、あくまで著者のマーガレット・ミッチェルの視点ですが、KKK(クー=クラックス=クラン)についても詳しく書かれていて、複雑な人種問題についても考えさせられます。
実は原作ではスカーレットは、もっと子供を産んでいるんですよ!色々な意見はあったとしても、アメリカ南部の雰囲気を知る名作だと私は思っています。
風と共に去りぬ 第1巻
風と共に去りぬ Gone With the Wind (ラダーシリーズ Level 3)
こちらは英語学習者用のラダーシリーズです。原作を読むのは大変ですが、こちらに挑戦してみてはいかがでしょうか。
南部を描いた作家としてもう一人、ノーベル賞作家のウィリアム・フォークナーをご存知でしょうか。同じくアメリカ連合国側のミシシッピ州出身の作家です。彼は南部の町をモデルとしたYoknapatawpha County(ヨクナパトーファ郡)という架空の土地を舞台とした作品をたくさん書いています。アメリカの歴史について考えさせられます。好みが別れる作家ではありますが、最初の一冊としておすすめなのが短編集です。
フォークナー短編集 (新潮文庫)
翌日のブランチ
さて、結婚式も終わって翌日はチャールストンの観光だ!と張り切っていたら、まだ続きがありました。
結婚式の翌日は、結婚式でお世話になった人を招いてのブランチタイムがあるんです。これも通常新婦側で準備するものです。
今回の場合は、新婦の母親の友人たちが、サンドイッチやソーセージ、サラダやスイーツなどを準備して、私たちが滞在している家に持ってきてくれました。素晴らしい友人たちです。新郎新婦はもちろん、新郎側の家族や友人も入れ替わりやってきて、おしゃべりに花が咲きます。
そして午後2時頃になって友人が皆帰って全てが終了。男性陣はゴルフへ、新婦を含めた女性陣はチャールストン観光にでかけることになりました。
出発した時間が遅かったこともあり、マーケットなどを歩いていると薄暗くなってきました。ウォーターフロントへ向かうと、なんとこの日はスーパームーン!
アメリカ旅行の素敵な思い出になりました。
結婚するという単語marry
ここで英語学習サイトらしく、少し結婚式に関連する英語について触れたいと思います。
結婚するっていう単語わかる?と聞かれたら、ほとんどの方は「知ってるよ。marryでしょ」と答えられると思います。
誰かと結婚することを表現したい時、marryを使った表現が二つあります。
marry+人を使ってShe married Greg.
get married to 人でShe got married to Greg.
プロポーズでよくつかわれるWill you marry me?は上のパターンです。
ここで間違いやすいのは、誰かと結婚すると言いたい場合のmarryは他動詞なので、withやtoなどの前置詞は不要だということです。
では、get married toのパターンについて考えてみましょう。
marryを過去分詞marriedにすると結婚している状態を表す形容詞となります。
既婚女性はa married womanと表せますし、自分が既婚者だと言いたい場合はbe動詞+marriedを使ってI’m marriedと言えます。
be marriedが結婚している状態を表すのに対し、get marriedは結婚している状態をgetした動作を表すことになります。誰と結婚したかにまで言及しない場合もtoを置かずにget marriedだけでも使えます。
では、動作を表すmarry と get marry(to)の違いは何でしょうか。
Collinsの学習者用の辞書で調べると下記のような一文がありました。
Get married is less formal and more commonly used than marry.
get marriedの方がカジュアルで多く使われる表現とのことですね。
英語で広がった世界
私が実際に経験したアメリカの結婚式と経験について紹介してきましたが、楽しんでいただけたでしょうか。私の祖母の姉二人が移民としてアメリカに渡り、苦労して頑張ってくれたおかげで、アメリカに今や多くの親戚がいます。
でも、英語に自信がなかったため、長い間ほとんど付き合いはありませんでした。私と同世代の親戚は世代でいえば日系3世。自分自身もハーフで、現地で家庭を持ち、完全なアメリカ人です。でも皆、自分たちのルーツである日本をとても大切にしてくれています。
実は今回チャールストンの前に、どうしても会いたい人がいて、テキサスに行きました。日系2世にあたる亡くなったおじさん(私の母のいとこ)の奥さんです。亡くなったおじさんは、戦後GIとして日本に来て、今回会いに行ったおばさんと結婚しました。
私から見たらとても優しいおじさんでしたが、結婚式当日の帰り道、GIの制服だったため駅で通りがかりの日本人に悪口を言われ、「ボクは日本人よ(アメリカ育ちなのでアメリカ訛り日本語)」と反論し、取っ組み合いの大喧嘩をしたそうです。日本人も苦しい時代でしたが、おじさんも色々な思いを持ってアメリカで暮らしてきたことを、今回90歳になるおばさんに会って改めて感じました。
おじさんは、おばさんが日本にいつでも帰れるようにと、結婚後アメリカの大手航空会社に転職しました。もちろん規定はありますが、社員の奥さんも無料で飛行機に乗れるからです。そんな優しいおじさんも亡くなり、おばさんは、今は娘家族と生活しています。娘と言っても私より年上で、すでに小学生の孫がいます。
その孫は、むりやり言えば日系5世ですね。孫たちに会ったのは初めてでしたが、ここまで行くと日本人の面影はほとんどありません。英語が私の世界を広げてくれ、とっても可愛らしいcousinがアメリカにいることを知りました。
因みにcousinは「いとこ」と習ったと思いますが、いとこから先の親戚関係のことは大体cousinで表します。亡くなったおじさんは、母のいとこなので、正確に言えば母のfirst cousinとなります。そしてその娘と私は「はとこ」にあたります。これはsecond cousinです。
私の英語はまだまだですが、語学を学ぶということは、単に英語が話せるようになることではなく、新しい世界に出会うことでもあると強く感じた旅になりました。
この亡くなったおじさんは7人兄妹。すでに亡くなった人がほとんどですが、私のsecond cousinsがアメリカにはたくさんいます。もっともっと勉強して、世界を広げていきたいと思っています。