好きな映画で英語を学ぼう。
映画好きな人、お気に入りの俳優がいる人、洋画を字幕なしで理解できるようになりたい!と思いますよね。ただ、現実的には、英語がかなり得意な人でも、何の不自由もなく、どんな映画でも完璧に理解するのは、ハードルの高いことだと思います。でも、ただ机に向かって英語学習に励んだり、英単語を繰り返し聞くことに、ちょっと飽きてしまった時、お気に入りの映画を楽しみながら英語に触れられたら楽しいですね。
今日は映画を使って英語学習する方法について考えてみました。
映画を使った英語学習、学習素材の選び方とは?
次のとおり。
- ストーリーが複雑でないもの
- 自分が楽しめる映画
- 現代の映画
日本語で映画を観ていても、「あれ?この人誰だっけ?」「どうしてこうなったんだっけ?」と話がこんがらがってしまうことありませんか?(私はあります)
素材を選ぶ時、もちろん、既にストーリーをよく知っていて、登場人物、セリフも把握しているものであれば多少複雑な内容の映画でも構いませんが、医療系や法律系など、難しい単語が多く使われているものや、若者言葉が多く使われている学園ものなどはあまり向いていないと思います。ファミリー映画やファンタジー、ロマンスなど、セリフが聞きやすそうなものを選んで下さい。セリフ的な言い回しはないかもしれませんが、英語学習という意味では、自然や動物を扱ったものなど、ドキュメンタリー映画もお勧めです。
素敵な俳優でも中には話し方に特徴があり、聞き取りにくい人もいるので、できるだけ、クリアに発音してくれる俳優の映画を選びましょう。中には「ネイティブなら聞き取れるの?」と疑問に思うほど聞き取りにくい(聞き取れない)俳優もいます。
あまり古すぎる映画だと、表現も古い場合もありますが、多少古くても名作と言われる映画はたくさんありますので、古典的な作品でなければ、あまりこだわりすぎる必要はないかもしれません。
映画で英語を学ぶ勉強は、基本的な英語学習を進めつつ、リスニングやネイティブの表現を楽しむという学習になりますので、基本は自分が楽しめる作品で、英語ならではの表現やリズムを学んでほしいと思います。
丁寧に聞き取る精聴でセリフに親しもう
映画で英語を学ぶメリットとしては、自宅で英語学習教材で学習するだけではなかなか触れる機会のない、生きた英語表現を学べることです。
- リスニングが強化できる
- 生きた英語表現が学べる
問題は、どのように学ぶかだと思います。
映画で英語学習は、初心者にとっては簡単なことではありません。ストーリーがわかっている映画を字幕なしでただ流して観ているだけでは、あまり上達は望めないでしょう。
なんとなく雰囲気でこんなことを言ってそうだ、ということがわかることも大切ですが、その先へ進むためには、一つ一つのセリフを全て聞き取る努力をする聞き方、いわゆる精聴をお勧めします。
映画一本やり切ろうと思うと大変なので(もちろんできる方には挑戦していただきたいですが)、短く区切った学習で構わないと思います。
英語字幕などで言っている内容を確認し、自分でも声に出しながら繰り返し聞いてください。一緒に発音してみると、演じている俳優によって、話し方のくせなどもわかって面白いと思います。字幕で観て、カッコイイと思っていたセリフや印象的なシーンのセリフが、英語ではどんな風に表現されているのかを、覚えてしまうくらい聞きこんでみて下さい。
- 基本は精聴
- 大好きな俳優とシャドーイング
- 精聴の後に会話のテンポやリズムに慣れる
映画を使った英語学習のアイディア
いざ、映画で英語を学ぼうと思った時、まず何を考えますか?やはり、字幕なしで見てどのくらい聞き取れるかということでしょうか?それとも英語字幕にして、内容把握に努めることでしょうか?
色々なパターンの英語学習について考えてみます。
まず、DVDを利用するとして、映画を観る方法がいくつかあります。パソコンで観る場合は、テレビではできない設定も出来たりしますね。映画は大画面のテレビなどで観たいものですが、英語学習をする場合は、パソコンを使った方が、一時停止などもやりやすいかもしれません。
- 字幕なしの原語で見る
- 日本語字幕と原語で見る
- 英語字幕と原語で見る
- 吹替え版で見る
- 吹替え版と英語字幕で見る
- 吹替え版と日本語字幕で見る
- 英語字幕と日本語字幕を両方出して見る
映画の字幕と吹替の特徴
映画を観る時、字幕派でしょうか?吹替派でしょうか?
学習法について考える前に、原文と字幕、吹替の関係についてまず説明したいと思います。
原文のセリフを10とした時、字幕と吹替、その何割程度を語っていると思いますか?字幕に比べて、実際の映画では随分たくさん話しているように思うことも多いのではないでしょうか。
日本語字幕にすると、原文10に対し3~4割、吹替版では7~8割程度しか入れられないと言われています。これは、音節などの違いもあり、どうしても日本語の方が長くなってしまうからです。字幕の場合は内容を正しく伝えることはもちろんですが、映画を観ている人が、映画を楽しみながら苦なく読めることが大切です。画面いっぱいに(大袈裟ですが)字幕が出たら、画面を邪魔してしまいますし、字幕を読むのに必死になってしまい、映画を楽しむどころではなくなってしまいますよね。
そのため、セリフの時間的長さに合わせて表示できる文字数も決まってきます。つまり、同じセリフでも10秒かけてゆっくり話している時と、早口で5秒で話している時では、字幕でも使える文字数が変わってしまうということです。
具体例で考えてみる
一つだけ例をあげます。下記のようなセリフがあったとします。前後のシーンによって訳し方は変わってきますが、これを字幕調、吹替調に訳すと下記のようなイメージになります。このセリフの場合は、字幕は13文字~14文字程度にする必要があります。吹替は口の動きや画像に不自然にならないよう合わせて、セリフを日本語にします。
But this place used to be nice. There’s a lot of history around here.
直訳:「しかし、この場所はかつては良かった。この辺りにはたくさんの歴史がある。」
字幕調:「昔は住みやすいいい所だった」
吹替調:「ここも昔は良かった。思い出がたくさんあるよ」
※英語セリフはある映画の一部ですが、字幕調、吹替調の訳文はイメージとして私が作ったものです。
いかがですか?字幕では、後半がすっかり抜けてしまいます。字幕の場合は、より大切な部分しか訳し出せなかったり、直訳的でなく、同じニュアンスを出せる別の言葉に置き換えたりもします。わかりやすく言うと、嫌なことがあって、超イヤミな感じで“Great!”と言ったセリフがあったとしたら、字幕の場合は「最悪!」や「最低!」となったりすることもあるということです。
その点吹替の方が、英語的な表現を日本語の自然な話し言葉にするので、表現方法はさまざまですが、全体的なニュアンスは出せています。ですので、吹替版の方が、複雑な映画を観る時は特に、情報を多く得られるので内容は深く理解できるということになります。ただ、プロの俳優や声優が演じるとはいえ、声がまるまる置き換えられてしまうので、出演している俳優の演技をそのまま楽しめないのが残念なところです。
ですので、字幕や吹替を使って映画で英語学習をしようと思う時には、ここでお話した原文と字幕と吹替の違いを知っておいて損はありません。原文のセリフと随分違うと感じることもあるかもしれませんが、それは誤訳というわけではなく、作品とストーリーを大切に考え、英語で伝えたかったことを日本語でわかりやすく伝えるための、翻訳者のテクニックによるものです。逆にいうと、字幕と吹替は、原語のセリフの完全な訳ではなく、原語のセリフの内容とニュアンスを活かすための日本語表現であると言えます。
再生方法によって期待できる学習効果
では、ここまでの説明を踏まえて、DVDの再生の仕方でどんなことが学べるか考えてみましょう。どのパターンで学習するにしても、2時間の映画を一気に観ようと思わず、キリのいいシーンの変わり目や、数分程度の時間などに区切って色々なパターンで聞いてみることをお勧めします。何も1本の映画を最初から最後まで学習に使う必要はありません。気になるシーンだけをじっくり学習してもいいでしょう。
字幕なしの原語で見る
これは最終目標ですが、最初に一度原語のみで見て、どんなことを言っているのか、どの程度理解できているのかを確認してもいいでしょう。
日本語字幕と原語で見る
これで日頃映画を観ている人が多いのではないでしょうか。この場合、お話したように英語のセリフが全て日本語になっているわけではないので、英語のセリフを完全に理解しようと思うと消化不良を起こすかもしれません。
英語字幕と原語で見る
言っていることが字幕ででるので、セリフの理解に使えます。ただ日本語字幕ですら、決められた時間に映画を楽しみながら読める文字数が決まっているのですから、セリフと同じスピードで英語字幕を読み進めるのは至難の業です。何を言っているのかわからなければ始まりませんので、一時停止なども利用しながら、セリフを読むことに集中して内容把握をして下さい。シャドーイングなど、工夫した学習もできます。
吹替版で見る
これは、英語学習にはなりませんが、字幕より、ストーリーやセリフのニュアンスをより理解できますし、何と言っても楽に楽しめますので、今後の勉強につなげる内容把握の面から、吹替版で観ておくこともいいでしょう。
吹替版と英語字幕で見る
私はこのパターン結構お勧めだと思っています。完全とは言えませんが、吹替は字幕より本物のセリフに近く、そのニュアンスも表現しています。少し忙しいですが、英語字幕が変わった瞬間に一時停止にして、まず英語を読みます。自分でセリフ内容を考えてみて、再生して日本語吹替を聞きます。自分で翻訳者になった気分で、日本語セリフを作ってみるのも楽しいです。
吹替版と日本語字幕で見る
これも英語学習にはなりませんが、先ほどお話した吹替と字幕の違いに興味がある方は、一度試してみると、その違いが感じられると思います。
英語字幕と日本語字幕を両方出して見る
英語、あるいは日本語を聞きながら英語と日本語を読むのは不可能ですが、一時停止を利用しながら、英語字幕を読んで、日本語字幕を読んで、内容を理解してから音声を聞きたい、という少しせっかちな人にはいいかもしれません(笑)。
お勧めな学習法のまとめ
上記を踏まえて考えると、お勧め学習法は次のような感じでしょうか。
- 1.英語音声のみで理解度を確認する
- 2.英語字幕で一時停止しながら字幕を読むことに集中してセリフ内容を理解する
- 3.英語字幕を出しながら英語で観て、聞き取り練習をする
- 4.英語字幕を読みながら、俳優をお手本にシャドーイングする
- 5.吹替版で英語字幕を出し、日本語でセリフのニュアンスを理解する
- 6.字幕の助けを借りて原語中心に聞く
- 7.原語のみで聞いてみる
最初にも言いましたが、あまり長い時間やろうと思うと時間がかかってイヤになってしまいます。10分のシーンでも、単純に7まで1回ずつ通したとしても1時間以上ですし、一時停止していたら、倍以上の時間がかかります。あまり堅苦しく考えず、この中から自分に合いそうな方法を選んでみるなど、立ち話しているような30秒~1分程度のシーンについて挑戦してみると続けやすいのではないでしょうか。
映画で英語学習できるアプリ
映画を利用して英語学習するためのアプリを紹介します。探すと映画を使った英語学習関連のアプリは色々あるようですが、ここでは、上記で解説したような精聴に通じる学習がしやすいアプリを2種類選んで紹介します。
超字幕 映画で英語は上達する
字幕を使って英語学習するためのアプリです。アプリのダウンロードは無料ですが、コンテンツはアプリ内から別途購入します。主な特徴は下記の通りです。
- セリフ単位の頭出しやスキップ
- 再生スピードの調整
- 日英字幕の同時表示
- 単語タップで辞書表示
- 好きなセリフを登録し再生できる機能
- 辞書も丸ごと1本収録
- オリジナル単語帳機能
- コンテンツは200タイトル以上
DVDなどでは操作しにくい操作ができるので、精聴学習にもお勧めです。セリフ単位で再生可能なので、日本語と英語の字幕が両方でても、しっかりと内容を確認できます。
Windows版もあります。
完全字幕SCREENPLAY『ローマの休日』(600円)
セリフとト書きを英語と日本語で文字化したスクリーンプレイシリーズがスマホで楽しめるアプリです。映画を読み物としても楽しめます。セリフは、音の繋がりや文法違反もそのまま表記されていて、日本語訳も映画館やDVDで観る時の読みやすさを重視した翻訳でなく、あまり意訳せず全文を対訳しています。特別な言い回しや俗語などには解説や例文が付いています。単語学習や英語学習ゲームなども出来ます。
下記のシリーズもあります。
完全字幕SCREENPLAY『オズの魔法使い』(600円)
完全字幕SCREENPLAY『シェーン』(600円)
いずれも少し古い映画ですが、どれも名作です。
まとめ
皆さんは大好きで何度繰り返して観ても飽きない映画はあるでしょうか?何かと時代を感じさせてしまうかもしれませんが、私は、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』が大好きで、DVDも持っています。
以前はテレビでもたまに放映されていましたが、最近はあまりやらなくなってしまいました。全編後編に別れている4時間近い映画で、ビビアン・リーの美しさはもちろんですが、当時のアメリカ南部の様子や南北戦争当時の暮らしが丁寧に描かれています。戦火の中、馬車を走らせ逃げる迫力のシーンは、CGなどなかった時代、セットを燃やし一発勝負の撮影だったと特集番組で観たことがあります。
この映画について語り出すと終わりがこないのでほどほどにしますが、この映画の有名なセリフに“After all, Tomorrow is another day!”があります。何事にもくじけない、前向きで美しいスカーレットが傷心の中、故郷のタラに帰ることを決心し、将来に希望を見出しこのセリフで映画が終わります。この言葉は、日本語では「明日は明日の風が吹く」と訳されていますが、あの感動のシーンでスカーレットが「明日は明日の風が吹く」と言ったら、ちょっとガクッと来てしまいますよね。もちろん映画では、もっとシーンに合った言葉で訳されているのですが、やっぱりどんな素敵な日本語より、ここは“Tomorrow is another day!”がしっくりきます。他にも、スカーレットの強さを表す印象的なセリフがたくさんあります。日本語訳ではなく、英語を英語のまま感じることができるフレーズに出会えると、その映画に対する親しみも益々強くなりますね。
因みにタイトルについてですが、子供の頃、『風と共に去りぬ』は「風と共に去らない」という意味だと思い、変なタイトルだと思っていました。完了の「ぬ」という使い方があるのもこの映画で学んだような気がします。英語のタイトルは“Gone With the Wind”ですが、この日本語タイトルは、日本語の美しさが感じられて、英語のタイトルに負けないとっても素敵な日本語のタイトルですね。